「解決手段はそろっている。あとは実行あるのみ」

  • 地球温暖化の確実な進行と「ティッピングポイント」
    • 今年は日本の記録的な猛暑ばかりではなく世界的にも異常気象が頻発した。2003年のヨーロッパの熱波を上回る1000年に1度と言われているロシアの熱波、5月のアメリカ・テネシー州における1000年に1度の大洪水、中国の中部と南部の洪水、パキスタンの2,000万人が被災した記録的大洪水などである。これらの異常気象の直接的な原因は偏西風の蛇行やラニーニャ現象と説明されている。専門家はその背後に地球温暖化の影響を示唆している。
      このような中で、あるティッピングポイント(臨界点)を超えると“気候”の急激な変化が起こることが懸念されているものがある。専門家によれば最大の懸念は夏の北極海氷の消滅で、これが起こると北極圏の温暖化は3倍に加速されるという研究もある。体積評価の研究によれば、あと3年~9年で夏は消滅するという予想もあり、夏の北極海氷がティッピングポイントを超えるのは、時間の問題と考えられている。
      このまま手をこまねいて“地球温暖化の更なる進行”を許せば、数十年以内に夏の北極海氷とグリーンランド氷床がティッピングポイントを超える恐れがかなり高いと考えざるを得ないのである。脱温暖化、資源保全、自然共生型の社会作りに全力を挙げなければならない。

  • 世界と日本の温暖化への取り組み
    • 昨年のラクイラサミットとコペンハーゲンのCOP15で“世界の平均気温の上昇を2℃以下に抑制する(いわゆる2℃ターゲット)”ことで世界の首脳が実質的に合意したことは地球温暖化対策にとって大きな進歩である。問題はそれをどう実行に移すかである。 “2℃ターゲット”の実現には温室効果ガスの大幅削減がどうしても必要であり、新たな枠組み作りには世界の排出量の41%を占める中国とアメリカのリーダーシップが不可欠である。日本は中国とアメリカが参加して、各国が排出量を大幅削減する公平な条約作りに全力を挙げて取り組むべきであろう。日本国内では新たなグリーンな産業創出に巨額な資金を投入すべきである。環境性能に優れたエコプロダクツの普及にエコポイントを含めた様々な政策により全力を挙げて取り組むべきである。
       環境面で持続可能な経済成長は“グリーン成長”と呼ばれ、グリーン成長の国際競争が激しくなっている。日本は環境技術や環境マネージメントにおいて強い国際競争力を持ち、千載一遇の好機が到来したと言える。
       日本のエコプロダクツ展はグリーン成長をリードするものであり、来場者が一刻も早く100万人を突破するようになる必要がある。

  • 「世界をリードする展示会」に
    •  これは世界の至宝とも言うべき展示会である。“温暖化地獄からの脱出”のためのビジョン、政策、アイデア、製品、サービス、金融、NGO活動、ライフスタイルのすべてがそろっている。出展者は来場する市民に「問題解決の手段はもうほとんどそろっている、やるべきことは実行だ」というメッセージを強く出していただきたい。来場される市民の皆様には「2℃ターゲット」を守るために、展示されているエコプロダクツがどれ程威力を発揮するのか、そのエコプロダクツの普及にはどのような政策が必要なのか、市民は何をすれば良いのかを質問していただきたい。
       エコプロダクツ展が世界のグリーン成長をリードする展示会になることを期待しています。

東京大学名誉教授 山本良一       東京大学名誉教授
       エコプロダクツ2010実行委員長 
山本良一

工学博士。専門は材料科学、持続可能製品開発論。東京大学先端科学技術研究センター、同生産技術研究所で研究活動に従事するかたわら、国際グリーン購入ネットワーク会長ほか環境関連団体の要職を歴任。2010年3月末に東京大学を定年退職し現職。著作に「1秒の世界」(責任編集)、「温暖化地獄」「みずものがたり」(全てダイヤモンド社)など。

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