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「自分の行動で世界が変わる」感覚を子供たちに チームラボキッズ松本代表に聞く

Sketch Smart Town_forColumn.jpg 国内外でデジタルアートを展示し話題を呼んでているチームラボが、エコプロ2017で「お絵かきスマートタウン」を展示します

 これはチームラボの教育プロジェクト「チームラボアイランド 学ぶ!未来の遊園地」に含まれるアートアトラクションのひとつで、紙に描いた車やビルをデジタル化して大画面上の街に配置していくとともに、太陽光や水力、風力といった自然エネルギーでその街を豊かにしていく、というもの。

 チームラボアイランドを展開する「チームラボキッズ」の代表、松本明耐(まつもと・あきたえ)さんに話を聞きました。

◇     ◇


 アートには、世の中のことを分かりやすく提示する、という側面が本質的にあると思います。もし文章で伝えようとしたら本1冊になってしまうような内容も、1枚の絵で表現できたりする。

 チームラボのアートもそうです。『百年海図巻』という、壁いっぱいに海の波をデジタル映像で再現した作品は、今後地球温暖化の影響で進むと言われる海面上昇をテーマにしています。「100年で海面が1m上がる」と言われても、ぴんとはこない。文章にして「これによって、パラオのような小さな島国は沈んでしまうかもしれない」と言えば、ある程度具体的に理解できる。さらにこれをアートにすれば、そこから人が受ける主観、つまり怖さのようなものまで再現できる。問題の大きさが、直接頭に入ってくるんです。

 「チームラボアイランド 学ぶ!未来の遊園地」は、チームラボの教育プロジェクトです。未来では創造性やチームプレーが大事ということを理解してもらおう、というのが共通のテーマで、さらに展示する作品のひとつひとつが、伝えたいテーマを持っています。

 今回エコプロで紹介する「お絵かきスマートタウン」の原型になった「お絵かきタウン」には、立体の構造に触れてもらおう、という思いを込めました。子どもたちが紙に描いた車や建物がデジタル画像になって街の中に出てくるのですが、同時にそうした車や建物の展開図が作られ、それをまた紙に印刷するとペーパークラフトを作ることができます。2Dで描いたものを、今度は3Dで作る。そこで構造を学ぶわけです。


――「お絵かきスマートタウン」のテーマは何ですか?

 「お絵かきスマートタウン」は、まさに循環型社会がテーマです。

 画面上に自分たちで街をつくり、その街を水力や太陽光、風力、バイオマスといった自然エネルギーで豊かにしていくもので、画面をタッチすると天候が操作できるようになっています。例えばカエルに触ると雨が降って、水力発電でエネルギーが生まれる、といった具合に。

 環境、循環といった意味を子供たちがすぐに理解するのは難しいですが、これなら楽しみながら、そして親とも一緒に学んでいけます。

 大人になると、学びの中心は脳、そして指先を使うぐらいですけど、一定の年齢に達するまでは、学びは体を通してするべきだと僕らは強く思っている。だから空間のデジタルなんです。単にデジタルだけなら、スマホやタブレットで済むでしょう。だけど空間にすることで、体を使って学ぶことができるようになります。


――チームラボが、未来では創造性やチームプレーが大事、と考えるのはどうしてですか。

 コンピューターが進化していったとき、人間に残される仕事って何でしょうか。それは、答えのないものを解決する、という「創造」です。また、情報化社会の広がりによって人は「共同的」な作業をしやすい時代になった。誰かと何かをする、というのもコンピューターには苦手な作業です。

 僕たちは、「共同」と「創造」をセットで考えたい。日本人はチームプレーで何かを成し遂げることが得意、と言われるけど、実はひとりひとりのスキルを持ちより、戦わせながら何かをする、という話になるとそうでもない。これからは、みんなを平均化して目的に向かうよりも、何かはゼロだけど何かは10、みたいな、異なる部分の創造性を持った人たちがチームを組んで結果を出していく、そういう時代になると思います。

 だからチームラボアイランドも、みんなで何かをするのっていいな、という感覚を持ってもらえるようにしています。子供って、放っておくと一人遊びに走るんですよ。でも僕らのアートではそうならない。

 例えば『つながる!積み木列車』では、子供たちが置いた積み木と積み木の間に線路がつながって列車が走り出すんですが、自分が意図しようがしまいが、誰かが別のところに積み木を置いたら勝手につながるんです。「人とつながらざるを得ない」状況を、ストレスなく作り出している。だからチームラボアイランドに参加した子供が、ここで友達をつくって帰っていく、というのは一番嬉しいですね。そして、そういう経験があると、誰かに影響を与え、自分も他者から影響を受ける、それを「素敵なこと」と考えられるようになる。

 自分の行為が他者に影響を与える、というのは、突き詰めて言えば自分の行動で世界も変えられる、という発想になります。


――SDGs(持続可能な開発目標)の、一人ひとりが得意な分野で貢献して世界を変えていこう、という考え方とも相通じますね。

matsumoto_forColumn.jpg 昔は日常の中でそういう他者、世界とのつながりを感じていたところもあると思うんです。例えばエコプロで紹介されてる棚田もそうですよね。上の人が水を止めてしまったら、下の田んぼには水が流れない。他の人や自然とのつながりを直接感じることができた。

 ところが都市化が進んで、そのつながりが膨大な媒介を通じて行われるようになり、分かりにくくなりました。そこを見える化することで、自分の行為が世界を少しでも変えられる、と感じて欲しい。

 そして、世界を変えていくためには、他の人に寛容になる、他者を肯定する、ということも必要です。これはチームラボアイランドだけでなく、チームラボのアート全体に言えることですが、どれも人がいたほうが楽しいんですよ。他の人がいると鑑賞の妨げになる、というようなものはなく、むしろ他の人と一緒に参加したほうが楽しめるように作られています。「他者の肯定」は、いわばチームラボのアート全体に通じる上位概念です。

 今、社会が抱える問題を少しでも解決できたり、少しでも人に優しくできるようになる。僕たちはそういう未来を思い描いてプロジェクトに取り組んでいます。(2017/12/03・I)

 

 

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