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環境配慮に数値目標、スマートシティ「Tsunashima SST」の挑戦(エコプロ勉強会)

s0527_01.jpg 5月27日、日本経済新聞社 SPACE NIOでエコプロ勉強会を開催しました。今回はケーススタディーとして、横浜市港北区・綱島で始まったスマートシティ開発プロジェクト「Tsunashima SST(サスティナブル・スマートタウン)」について、パナソニック ビジネスソリューション本部CRE事業推進部の坂本道弘課長にお話しいただきました。

 Tsunashima SSTはパナソニック、野村不動産をはじめ10団体が連携して進めるまちづくりプロジェクトです。新しいエネルギーシステムの採用により、CO2排出量の40%削減を目標に掲げるなど、環境配慮の面でも大きな注目を集めています。

 坂本氏による講演の要旨を下記にまとめました。

 

Tsunashima SSTの概要

 私たちの不動産の活用は、自社遊休地の活用が中心であり、その多くは工場跡地だ。ものづくりによる地域貢献から、まちづくりによる地域貢献へ、という発想でプロジェクトを進めている。

  もちろんそれは自社のビジネスにもつながる。オールパナソニックで先進的な技術、ソリューションを提供できるチャンスでもあり、他の企業や行政といった 様々なパートナーとの協業の機会にもなる。戦略的に新しい事業を生み出したり、2020年に向けた国内の大きな動きに対する提案を実践する場にもなるだろ う。

 Tsunashima SSTに先立ち、神奈川県藤沢市で「Fujisawa SST」のプロジェクトを進めてきた。そこでは2007年ごろから協議を開始し、行政と共同でまちづくりの方針を作成した。その中には環境配慮、省エネル ギー、エネルギーマネジメントといった内容を明記している。すでに600戸ほどの戸建住宅の約半数に入居があり、カルチュア・コンビニエンス・クラブが運 営する商業施設「湘南T-SITE」や、ヤマト運輸による物流センターもオープンした。特別養護老人ホームや病院、保育所、学習塾などが一体となった複合 型の福祉・健康・教育施設も今後順次開業していく。

 こうした実績を経て「Tsunashima SST」はスタートした。パナソニックという会社は電機メーカーだが、重電よりも家電など、生活に近い分野に強みがある。くらしという視点から新しい街、エコな街を考えていきたい。

  綱島のこの土地は、松下通信工業が1960年に事業を始めた場所だ。50年近くお世話になったが、2011年、事業所ではない新しい土地活用を考えること が決まった。2015年には野村不動産と土地売買契約を交わすとともに、関係する企業の間でスマートシティ協定書を締結。今年3月に構想発表会を開いた。

 その発表会には横浜市の林文子市長も出席した。横浜市の都市計画(上位計画)を踏まえた上で、詳細な地区計画の中に環境、エネルギーに関する内容を盛り込んでいる。これによって、エコ・スマート・サスティナブルが着実に具現化されていくようにした。

  37,900㎡の敷地の中に、野村不動産、関電不動産開発が供給する集合住宅、ユニーが運営する商業施設、アップル社の技術開発施設、慶應義塾大学の国際 学生寮、JXエネルギーの水素活用拠点、東京ガスグループのエネルギーセンターが立ち並ぶほか、タウンマネジメントセンターも設けることになっている。

 プロジェクト推進のために、パナソニックと野村不動産が代表幹事となり、10団体によるTsunashima SST協議会が発足した。横浜市にもオブザーバーとして参加していただいている。

  このまちづくりでは、エコについて数値目標を明確に設定しているのが特徴だ。CO2排出量の2005年度比40%削減、生活用水使用量30%削減、新エネ ルギー等利用率30%以上など。また環境性能の認証については、横浜市建築物環境配慮制度(CASBEE横浜)を意識しつつも、グローバルな評価である 「LEED ND」のゴールド認証取得を目指している。さらにエコ以外の、安心・安全やセキュリティ、モビリティ、健康などにも数値目標を導入していく考えだ。

 

目標達成のための「3つのコード」

s0527_02.jpg ではこうした目標をどう実現していくか。そのために私たちは「3つのコード」というものを策定した。

 第一にデザインコード。建物の配置や色、素材だけでなく、スマートタウンということで照明や防犯カメラ、各種の高性能な設備機器までを最初からデザインの要素として織り込んでいく。 

 次にサスティナブルコード。持続可能な暮らしを目指すために、CO2、健康・環境に配慮したマテリアル、水や廃棄物などに関する規定を作る。

 そしてスマートコード。これは新しいコンセプトで、スマート機器を活用して便利で快適、安心・安全なくらしを実現するための規定だ。自動化・省力化といったことも含まれる。

 これら3つのコードをそれぞれの事業者が順守しながらまちづくりを進めていく。

  今までの経験で感じていることだが、「街の性能」のようなものをどう示していくか、これは大変難しい。法律や条例で決められているわけではないし、民間の 自主的な取り組みだけに委ねるのは馴染まない部分もある。生活者の、かなりプライベートな空間にまで踏み込んでいく必要があるからだ。しかし今回のプロ ジェクトでは、まさにこれに取り組み、街の性能を数値で示せるようにしたい。

 

敷地内にタウンエネルギーセンター

 それぞれの施設について、環境、エネルギー面を中心に紹介したい。

  野村不動産ほかが手掛ける集合住宅では、先進的なスマートサービスを積極的に導入する。創電・蓄電の連携システムや家庭用燃料電池、スマート HEMS(Home Energy Management System)などだ。それらにパッシブデザイン(自然エネルギーを生かす設計思想)を組み合わせていく。

 商業施設を担当するユニーはエコ・ファースト企業であり、Tsunashima SSTでも次世代の環境配慮型ショッピングセンターを目指すとしている。エネルギーシステムはもちろん、マルチサイネージシステムや街受ロッカーなど、先進的なスマート技術を採用する。

 敷地内のパナソニック自身が保有する土地には「タウンエネルギーセンター」「国際学生寮」「水素活用拠点」を設ける。

  タウンエネルギーセンターは東京ガスグループが運営する。特別高圧の電気を受電し、ここから各施設に分配する。同時に中圧ガスを使ったガスコージェネレー ションシステムによる発電も行う。冷水・温水やコージェネレーションの余剰廃熱を街全体で融通する熱利用の仕組みもつくる。コンパクトで、持続性にとって 重要である経済合理性を持ちうるシステムを目指したい。

 水素活用拠点はJXエネルギーと共に構築する。水素ステーションにとどまらず、今後加速していく水素技術にパナソニックとしてもチャレンジする場にしていきたい。

 慶應義塾大学の国際学生寮は、交流、セキュリティ、環境に配慮し、全世界から集まる留学生と国内の学生がともに暮らす寮である。国際交流、地域交流、そして「知の交流」 を通じて、未来を担う人材、地域を支える人材が育つ寮になるだろう。

 その1階には「タウンマネジメントセンター」を設置予定だ。街全体の共通サービスの管理や、コミュニティイベント情報の発信、非常時の支援拠点機能などを担うべく検討を進めている。

 

6つのスマートサービスと開発・運用プラットフォーム

 Tsunashima SSTでは、街全体に6つのジャンルでスマートサービスを提供していく。(1)エネルギー(2)モビリティ(3)コミュニティ(4)セキュリティ(5)ウェルネス(6)ファシリティだ。

 エネルギー分野では「多様なエネルギーを賢く分け合う」をコンセプトに、最適化やモニタリングなど、さまざまな技術を検証しながら活用していくことになる。コージェネレーションシステム自体がすでに環境配慮の技術だが、さらにどう進化させられるかがポイントだと思う。

  エネルギーと並び、重視しているのがセキュリティだ。街全体を網羅的に見守るための、機械警備と人による警備のベストミックスを追求したいと考えている。 例えば、セキュリティゾーニングのようなことができないか。人命を守るゾーン、情報を守るゾーン、など、主に何を守るかで整理し、カメラの配置やセキュリ ティレベルを決めていくようなことを検討している。

 また今回のプロジェクトでは、その計画フェーズと、運用・運営フェーズの両方で、有効と思われるプラットフォーム・システムを活用していく。

  ひとつが環境計画支援に活用するVRだ。街の建物、道路、公園などのデータを取り込み、3次元CGで検討できるようにしている。例えば建物の色や高さを変 えたとき、それが周囲にどのような影響をもたらすかを直観的に把握できるもので、関係者内の合意形成ツールとして機能する。

 もうひとつ、 大林組に技術面のアドバイザーとして参加してもらい、導入するのがSCIM(Smart City Information Modeling)だ。まちづくりに必要な3Dデータを一元管理して街全体を「見える化」するという仕組みで、ここから新しいサービスも生み出せるのでは ないか期待している。

 

2018年のまちびらきを目指して

 このプロジェクトは横浜市だけでなく、国や県とも積極的に連携していく。タウンエネルギーセンターの取り組みは環境省のグリーンプラン・パートナーシップ事業、神奈川県の分散型エネルギーシステム導入事業に採択された。

  すでに一部が着工されているが、おおむね2018年にはすべての建物が完成し、まちびらきができるだろう。さらに、周辺地域にもプラスの波及効果をもたら せるようにしていきたい。隣接したエリアで進む、相鉄・東急直通線「新綱島駅(仮称)」の周辺整備や、野村不動産による日吉複合開発計画などとも相乗効果 を発揮し、広く地域全体の価値が上がっていくような取り組みを続ける。

 

関連リンク

Tsunashima SST ウェブサイト http://tsunashimasst.com/JP/

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