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防災・減災のシステム、生態系の中に コミュニティーの知見から学べ――国連防災会議でフォーラム

0314_1.jpg 3月14日から18日まで仙台市で第3回国連防災世界会議が開催され、「パブリック・フォーラム」と呼ばれる一般参加可能なセミナー、シンポジウムも多数の出席者を集めた。

  14日のシンポジウム「防災・減災・復興への生態系の活用 3.11の経験を世界へ未来へ」もパブリック・フォーラムのひとつで、環境省、国連大学サステ イナビリティ高等研究所、IUCN(国際自然保護連合)が主催した。人の力で自然を抑え込もうとするのではなく、生態系を守り、自然の中に組み込まれた機 能を生かす防災・減災について専門家たちが意見を交わした。

 国連大学上級副学長の武内和彦氏は基調講演の中で「日本はリング・オブ・ファイヤー(環太平洋火山帯)の上にあり、自然災害の多発する国だ。しかしそれ は同時に風光明媚で、人々の豊かな暮らしがある、ということも示している。自然の脅威と恵み、その両方と共生していかなければならない」と指摘。畏敬を もって接し、工学的な手段だけに頼ることなく、自然そのものの機能を生かして防災・減災を図ることこそが「レジリエンス」(しなやかに対応し、自ら回復で きる強じんさ)につながる、と主張した。

 また防災・減災の担い手としての地域コミュニティーの重要性も強調し、そこでは災害適応を農林 水産業や観光などの振興と複合的に進めることもできるのではないか、と述べた。コミュニティーの充実だけではなく、コミュニティー同士の連携も広げる 「ローカルとグローバルの融合」や、気候変動適応と自然災害適応をひとつの問題意識としてとらえる、災害への備えと日々の暮らしの豊かさを同時に実現して いく、といった大局的・総合的な視点が必要だとした。その上で、もはや「グリーン」「レジリエンス」「共生」といった概念は象徴ではなく、実践すべきもの だと呼びかけた。
 
0314_2.jpg 東北最大級の有人離島である宮城県・気仙沼大島の観光協会会長、白幡昇一氏は、自然との共生を重視した防災について事例を発表した。

  気仙沼大島は東日本大震災で死者・行方不明者が31人にのぼり、漁業施設も壊滅的な打撃を受けた。だが被害が甚大であったにもかかわらず、震災前より大規 模な堤防を建設することには多くの住民が反対したという。生活に密着し、観光資源でもある砂浜は、住民にとっても思い入れのある場所だからだ。

 そこで防潮堤は震災前の規模で再建するにとどめ、防災林の設置や道路のかさ上げ、浸水危険地域への居住を避けるといった対策を新たに施した。これによって景観や環境への影響を極力押さえ、さらにこうした生態系の保存を地域づくりや観光振興につなげようとしている。

  経団連自然保護協議会会長の佐藤正敏氏は「これまで多くの企業は災害対策について、主に工学的な見地から判断をしてきた。しかし今後は地域コミュニティー に受け継がれてきた『知恵』のようなものに着目すべきではないか」と指摘。例えば河川と共存しながら共同体を形成し水防にあたってきた「輪中」のような仕 組みや、過去の地震に際して建てられた石碑に刻まれた情報などだ。企業はそうした視点もBCP(事業継続計画)に取り入れてはどうか、と提案した。

  「企業と生態系、というと、これまで社会貢献(CSR)の文脈で語られてきたテーマだ。しかし今後はBCPの視点で考え、応用していかなければいけない」 と佐藤氏が発言すると、パネルディスカッションの司会を務めた東京都市大学教授の涌井史郎氏も「CSRからCSV(共通価値の創造)への転換であり、興味 深い」と応じた。

 IUCNのシニアプログラムコーディネーター、ラディカ・ムルティ氏も「真の知見は、きれいに作られたプレゼンテー ション資料の中にではなく、災害・復興の現場にある」と述べ、地域コミュニティーに深く入り込むことこそが、自然を生かした防災につながると主張した。 「自然は災害をもたらすが、自然の中にその制御システムも備わっている。それをゆがめることは、かえって私たち人間が生き残る力を弱めてしまうものだ」。 IUCNでは、そうした自然のシステムを地域の人々との協働の中で見出し、防災だけでなく環境を生かした漁業など、産業の振興にも貢献しているという。

  司会の涌井氏は「歴史に学ぶことも大切だろう。日本人は自然の資産を食いつぶすのではなく、自然に寄り添い、その『利息』で暮らす仕組みを作ってきた。神 聖な奥山と、人が暮らす里山、という区分も、多発する災害を受け止めながら食料を生産する土地利用の意識ではなかったか。平時の防災を『祭り』として定着 させてきた地域もある」と解説した。そして「人工構造物と、生態系のベストミックスをどう考えていくのか、そしてそれを担保する地域、社会システムをどう 作るか。認識を深め、前に進めていこう」と議論をしめくくった。(2015/03/25・I)

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